2019年12月16日
薬物依存を減らすために私たちが出来ること 廣瀬隆夫
芹が谷の神奈川県立精神医療センターで薬物依存治療の最前線についてお話をお聞きしましたので感想をまとめました。
◆ ◆ ◆
依存症になる人は、自分のやっていることを認めたがらない。こんなことをやっていたらダメだということは自分でも十分承知している。でも、彼らは時間をかけて改善しようというプランが描けない。ダメな自分から逃げるために薬物を続けている。依存症になる人は、心の深いところに大きな傷を負っている。薬物やアルコール、ギャンブル、ゲームに没頭している間は、傷が原因の悩みから開放される。悩みを忘れるために何かにのめり込む。それが過度に進むと依存症になる。
麻薬などに手を出す人は意志が弱いと言われているが一概にそうとも言えない。更生施設で薬物に手を出さないようにもっと意志を強く持ちなさいと教育してもあまり効果は期待できない。更生を支援する側も根本的なものを治さなければ依存症は治らないということを理解していない。麻薬依存は、刑を科して罰しても治りにくい病気と考えるべきだ。根本原因を掘り起こして、それを根絶しない限り繰り返すだけである。臭いものにはフタをするだけではなく元を絶たなければ臭いは無くならないということだ。
スマープという治療法がある。SMARPP(スマープ、Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:芹が谷覚せい剤依存再発防止プログラム)とは、神奈川県立精神医療センターの芹が谷病院にて開発された認知行動療法の志向をもつ外来の治療プログラムである。アメリカの西海岸のマトリックス研究所のマトリックス・モデルに準拠しており、患者に覚醒剤への薬物依存症に対する知識をつけ、薬物の渇望がどう起こり、それに対していかに対処行動を身につけるかといった、具体的な対処スキルの修得に重点が置かれている。また、正直に過去のプライベートな体験を話すことを回復の糸口とするため情報を治療以外に公開しないことが前提になっている。
国際的には刑罰ではなく依存症の治療をする政策が主流である。日本は、覚せい剤乱用が50年も続いている世界的に稀有な国である。日本では、薬物依存症が治療されないため薬物犯罪は、男子62.1%といった高い再犯率で推移しており、治療より司法に大きな費用をかけていることが原因と考えられる。日本の標準的な精神科医は、覚醒剤によって精神症状が表れた場合のみしか介入せず、その根本にある依存症を専門とする医者は少なかった。
日本では薬物依存症になった者は、民間の回復施設などを利用する以外に治療という選択肢がない状況にあった。薬物犯罪の刑を一部、執行猶予する法案が通ったこともあって、治療体制と治療プログラムの整備が求められていた。2015年には、それまでの8都県だった治療プログラムの提供施設を、日本全国69カ所の精神保健福祉センターに拡大することを決定した。2016(平成28)年度の診療報酬の制度の改定にて、SMARPPは依存症集団療法として診療報酬加算が認められた。(スマープ(Wikipedia)より引用)
依存症になる人は、他人への依存心が強いとは限らない。むしろ、自分で何でも解決したいと思っている人が多い。嵐で不意に海に投げ込まれた時、自分で見つけた薬物という浮き輪にしがみ付いているのが依存症患者の姿である。そのまま漂流が続く限り依存も続くのである。誰にも助けを求めず、自分一人で浮き輪というモノで解決したいと思っている。海で遭難した時には、ジタバタしないで力を抜いて海面に浮いて通りかかる船を見つけて助けを求めることが最善の策なのである。この助け船が医療機関であり専門医である。
依存症の人は、子どもの頃に親や同級生からいじめや虐待を受けていることが多い。虐待と依存症の相関は大きい。成長期に親の愛を受けないで育った人が依存症になりやすい。麻薬依存などの人は、基本的に他人を信頼していない。腹を割った話ができる仲間がいなくて孤立して硬い殻にとじこもっている人が多い。このような人たちが、本音を喋り始めたら快方に向かっている証拠である。そのような時には褒めてやることが重要である。何かに依存することは誰にでもある。朝食にコーヒーを飲まなければ落ち着かないというのも一つの依存である。それで生活に支障が出なくて健康な生活を送ることができれば何の問題もない。依存が原因で健康を損ねたりトラブルを起こすようになったときに依存症と呼ばれるようになる。
麻薬に手を出すと犯罪者として摘発されて罰せられる。特に芸能人は、完膚なきまでにバッシングされる。薬物を始めるきっかけは、疲れを癒すとか、睡眠を得るとか、悩みを忘れるとか自分の問題を解消するために始めることが多い。決して人をあやめるとか、窃盗をするとか、反社会的行為を行うためとかではない。薬物依存の人は、むしろ、薬物による犠牲者ではないかと思う。薬物の売買をしている業者にもっと重い刑を科すべきだと思う。薬物をビジネスにする売人がいる限り薬物依存はなくならない。
薬物依存の根本に幼児期の虐待が潜んでいることも大きな問題である。いじめや虐待が減れば薬物依存も引きこもりも減る。しかし、何で虐待が起こるのかは原因がわからない。虐待は、先進国と呼ばれる文明が進んだ、どちらかと言えば裕福な国で増えている。人間は何なのか、文明の進歩とは何なのか、私たちは何のために生きているのかをもう一度考え直す必要があると思っている。
薬物依存を減らすために私たちが出来ること 廣瀬隆夫
芹が谷の神奈川県立精神医療センターで薬物依存治療の最前線についてお話をお聞きしましたので感想をまとめました。
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依存症になる人は、自分のやっていることを認めたがらない。こんなことをやっていたらダメだということは自分でも十分承知している。でも、彼らは時間をかけて改善しようというプランが描けない。ダメな自分から逃げるために薬物を続けている。依存症になる人は、心の深いところに大きな傷を負っている。薬物やアルコール、ギャンブル、ゲームに没頭している間は、傷が原因の悩みから開放される。悩みを忘れるために何かにのめり込む。それが過度に進むと依存症になる。
麻薬などに手を出す人は意志が弱いと言われているが一概にそうとも言えない。更生施設で薬物に手を出さないようにもっと意志を強く持ちなさいと教育してもあまり効果は期待できない。更生を支援する側も根本的なものを治さなければ依存症は治らないということを理解していない。麻薬依存は、刑を科して罰しても治りにくい病気と考えるべきだ。根本原因を掘り起こして、それを根絶しない限り繰り返すだけである。臭いものにはフタをするだけではなく元を絶たなければ臭いは無くならないということだ。
スマープという治療法がある。SMARPP(スマープ、Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:芹が谷覚せい剤依存再発防止プログラム)とは、神奈川県立精神医療センターの芹が谷病院にて開発された認知行動療法の志向をもつ外来の治療プログラムである。アメリカの西海岸のマトリックス研究所のマトリックス・モデルに準拠しており、患者に覚醒剤への薬物依存症に対する知識をつけ、薬物の渇望がどう起こり、それに対していかに対処行動を身につけるかといった、具体的な対処スキルの修得に重点が置かれている。また、正直に過去のプライベートな体験を話すことを回復の糸口とするため情報を治療以外に公開しないことが前提になっている。
国際的には刑罰ではなく依存症の治療をする政策が主流である。日本は、覚せい剤乱用が50年も続いている世界的に稀有な国である。日本では、薬物依存症が治療されないため薬物犯罪は、男子62.1%といった高い再犯率で推移しており、治療より司法に大きな費用をかけていることが原因と考えられる。日本の標準的な精神科医は、覚醒剤によって精神症状が表れた場合のみしか介入せず、その根本にある依存症を専門とする医者は少なかった。
日本では薬物依存症になった者は、民間の回復施設などを利用する以外に治療という選択肢がない状況にあった。薬物犯罪の刑を一部、執行猶予する法案が通ったこともあって、治療体制と治療プログラムの整備が求められていた。2015年には、それまでの8都県だった治療プログラムの提供施設を、日本全国69カ所の精神保健福祉センターに拡大することを決定した。2016(平成28)年度の診療報酬の制度の改定にて、SMARPPは依存症集団療法として診療報酬加算が認められた。(スマープ(Wikipedia)より引用)
依存症になる人は、他人への依存心が強いとは限らない。むしろ、自分で何でも解決したいと思っている人が多い。嵐で不意に海に投げ込まれた時、自分で見つけた薬物という浮き輪にしがみ付いているのが依存症患者の姿である。そのまま漂流が続く限り依存も続くのである。誰にも助けを求めず、自分一人で浮き輪というモノで解決したいと思っている。海で遭難した時には、ジタバタしないで力を抜いて海面に浮いて通りかかる船を見つけて助けを求めることが最善の策なのである。この助け船が医療機関であり専門医である。
依存症の人は、子どもの頃に親や同級生からいじめや虐待を受けていることが多い。虐待と依存症の相関は大きい。成長期に親の愛を受けないで育った人が依存症になりやすい。麻薬依存などの人は、基本的に他人を信頼していない。腹を割った話ができる仲間がいなくて孤立して硬い殻にとじこもっている人が多い。このような人たちが、本音を喋り始めたら快方に向かっている証拠である。そのような時には褒めてやることが重要である。何かに依存することは誰にでもある。朝食にコーヒーを飲まなければ落ち着かないというのも一つの依存である。それで生活に支障が出なくて健康な生活を送ることができれば何の問題もない。依存が原因で健康を損ねたりトラブルを起こすようになったときに依存症と呼ばれるようになる。
麻薬に手を出すと犯罪者として摘発されて罰せられる。特に芸能人は、完膚なきまでにバッシングされる。薬物を始めるきっかけは、疲れを癒すとか、睡眠を得るとか、悩みを忘れるとか自分の問題を解消するために始めることが多い。決して人をあやめるとか、窃盗をするとか、反社会的行為を行うためとかではない。薬物依存の人は、むしろ、薬物による犠牲者ではないかと思う。薬物の売買をしている業者にもっと重い刑を科すべきだと思う。薬物をビジネスにする売人がいる限り薬物依存はなくならない。
薬物依存の根本に幼児期の虐待が潜んでいることも大きな問題である。いじめや虐待が減れば薬物依存も引きこもりも減る。しかし、何で虐待が起こるのかは原因がわからない。虐待は、先進国と呼ばれる文明が進んだ、どちらかと言えば裕福な国で増えている。人間は何なのか、文明の進歩とは何なのか、私たちは何のために生きているのかをもう一度考え直す必要があると思っている。
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